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観劇記録

熱海殺人事件 CROSS OVER 45

2月17日(土)(初日) マチネ・ソワレ@紀伊國屋ホール

 
 
もう何度目かとなる熱海殺人事件。演出は苦手だけど好きな演目かつ1番取っつきやすいキャストのため紀伊國屋書店へ。相変わらず座りにくい座席だ。そういえばこのホールで後方に座った記憶がない…。
2時間休憩なし、さてはまた何かしら入れてくるのかと呆れつつもなんだかんだあっという間の2時間でした。
 
木村伝兵衛役の味方さん。去年よりもしっかりとした座長になった印象でした。余裕ができたのか細かな所作に気を配ることができるようになったのかなとも。やはり声が良いです。たまに怪しい滑舌がありますが聞き取れない程ではないです。掛け合いのテンポの取り方が独特なのかそれとも立ち上がりが悪かったのか、話が進むに連れて勢いが増していったように感じました。
個人的な解釈ですが、馬場さんの気高く我が道を行く伝兵衛とは違い、美意識が高く自分のものに色を濃く付けようとする伝兵衛に見えました。千秋楽までどう変化するか、さらにどうやって突き詰めていくのか楽しみです。
 
熊田留吉役の石田さん。いつもテレビで拝見しているためとても新鮮でしたが、さすが舞台慣れしていらっしゃいますね。出会いの場面から伝兵衛に呑まれてしまわないかと思っていましたが杞憂に終わりました。
台詞のテンポと間合いの取り方、アドリブが誰よりも上手く、さすがとしか言えません。若手だけでは心配なぐだっとしてしまいそうな所もうまくカバーしており、これは経験の差を見せられたのではと思いました。
 
水野朋子役、アイ子役の木崎さん。とても不思議でこれまでどうやってあの木村伝兵衛と渡り合ってきたのか、むしろ付き合わせていたのか未だに疑問のままでいます。これまでの水野婦人警官に凛とした大人の女性でもある面があるという印象を残したままのせいかもしれません。
ただ、アイ子の素朴な可愛らしさ、苔じゃないと叫ぶ感情の吐露、終演後も脳裏に焼きつくかのように残っていました。
 
大山金太郎役の匠海さん。大山役の方はどの方もお顔が整っている分にあの丸眼鏡をかけたボサボサ頭とのギャップが激しいのですが今回も例に漏れず。
正直、彼が千秋楽までどこまで成長できるのか長い目で見なくてはと思いました。若い勢いだけで無理やり突き抜けることはできても、アイ子に百姓と言われ、思い出もないがしろにされた感情をどう表現するのか。そしてそこからどうやって腰紐に手を伸ばすのか。彼なりの大山をはっきりとさせられたらなと思います。
 
5年前に初めて観劇してから熱海殺事件を見続けてきましたが、今回は全体的に勢いに欠ける印象でした。伝兵衛と熊田が圧倒的で水野も大山もしがみ付いていくことに必死ではないのだろうか。初舞台にこの戯曲は難しすぎたのではないのだろうか。
また、時事ネタはともかくキャスト個人の弄りはいい加減どうにかならないのだろうか。面白かったとしてもそこで時間を取られても…。味方さんが無理やり締めていたのである意味印象に残りました。
あと数回観劇予定のため、どう変化していくのか楽しみであります。